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本音はツイッターで…力士たちのSNS事情

本音はツイッターで…力士たちのSNS事情
 大相撲秋場所は99年ぶりに3横綱2大関が休場となってしまったが、平成生まれの若手力士が場所を盛り上げている。以前の「お相撲さんは無口」というイメージとは様変わりして、彼らは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って自分の言葉でしゃべり、私生活の様子も発信している。本場所の相撲だけではわからない力士たちのSNS事情を相撲リポーターの横野レイコさんに紹介してもらった。
 

◆ファンの視線を力に…阿武咲

 「力士は土俵で語るもの」と言われたのは、もはや遠い過去の話。先輩の関取たちが見たら、驚くような時代になっている。幕内3場所目で、12日目に勝ち越しを決めた前頭3枚目の阿武咲(おうのしょう)は21歳。インスタグラムやフェイスブック、ツイッターなど3種類のSNSを使いこなす。場所休みや巡業中は、度々それらを更新し、仲の良い関取たちと食事に出かけた写真や、外出先の景色の写真をアップするなどしている。プライベート感満載の写真は、見ているだけで関取のライフスタイルが手に取るようにわかる。インスタグラムやフェイスブックでも連動できるように設定している。

 1年半前、十両昇進をきっかけに軽い気持ちで始めたというツィッターは、番付の上昇とともにフォロワーが増え、今では8800人以上にフォローされている。新入幕だった夏場所前の5月13日にはツイッターとインスタグラムに「後は己を信じてやるだけ!」「早く土俵に上がりたい!」と場所への意気込みを率直に書き込み、自信をのぞかせた。言葉通りの活躍で初の敢闘賞も獲得し、場所後には「応援ありがとうございました!そしてこれからも宜しくお願します!」とコメントを残し、最後には「俺は必ず強くなる!」と締めくくっている。

 2場所目となる7月の名古屋場所では、1949年の夏場所以降、初代若乃花や白鵬など6人しか達成していない新入幕から2場所連続の2ケタ勝利を挙げ、「新入幕からの2場所目は伸び悩む」というジンクスもはね返す活躍を見せて、知名度は一躍全国区になった。国技館では急きょ、阿武咲の錦絵の絵葉書が作られたほどだ。カラオケのうまさは横綱級と評判だが、ファンとの交流も特筆ものだ。場所中もSNSを必ずチェックし、ファンがアップする動画を見て気分転換し、集中力を高めているという。多くのファンに見られることを力に変える強さを持っている。

 同い年のライバル、貴景勝(たかけいしょう)との写真も多く、「中学時代から全国大会などで必ず顔を合わせていたし、ライバル意識はありますね。負けたくない思いは人一倍強いけど相撲を離れると仲良しで、巡業中も必ず一度は2人きりで食事に行きます」という。もはや彼らにとっては日常生活の欠かせないツールになっているようだ。
 

◆ツイッターでしこ名変更を発表…北勝富士

 今場所4日目に横綱・日馬富士を倒した前頭2枚目の北勝富士(ほくとふじ)。昨年9月27日、自らのツイッターでしこ名を変えることを発表し、相撲ファンの間で話題となった。アカウントも改名と同時に本名からしこ名に変更している。

 日本体育大学時代はフェイスブックに親しんでいたが、プロ入りをきっかけにツイッターに変更し、日々の出来事をこまめに発信している。場所前の恒例行事となっている付け人たちとの決起集会を兼ねた食事会の模様を9月7日にアップした。一方、場所前の8日に亡くなった世話人の友鵬(ゆうほう)さんのことを「巡業でお世話になりました」と語るなど自らの思いを綴(つづ)っている。

 ファンからいただいた差し入れをアップし、「今日はこんな差し入れをいただきました、ありがとうございます」と書き込む丁寧さは、体重約160キロの大きな体からは想像できない。今場所の初日に白星を飾ると、「おかげさまで初日が出ました」と早速アップして、場所が始まったとは思えないほどの余裕を感じさせた。
 

◆白鵬やベテラン勢もSNSで発信

 横綱白鵬も、ツイッターを数年前から始めている一人だ。そのフォロワー数はすでに14万人を超えている。今年の夏巡業中、バスが渋滞にはまり車内が重苦しい空気になっていた際に、松山千春さんの「大空と大地の中で」を隣に座っていた勢(いきおい)と一緒に歌い、周囲をなごませた。そしてその動画をアップした。レスリングの吉田沙保里さんからは「うまいですね」と、リツイートされていた。数日前に出発が大幅に遅れた飛行機内で松山さんがその歌を生で披露したというニュースが伝えられており、それを真似た白鵬の洒落(しゃれ)た演出には称賛の声も多かった。

 場所の合間にはモンゴルやハワイ、香港などに出かけるプライベートも隠すことなく伝え、ファンにとっては横綱の多忙で華やかな生活が手に取るようにわかる。何事にもおおらかな白鵬の懐の広さをうかがわせる。日本語を自分で打ち込み、こまめにツイートする。「メールをすると日本語を覚えるから」という、プラス思考の白鵬らしいツイッターになっている。

 また、昨年、左アキレス腱(けん)断裂の大怪我をして引退の危機と心配された十両2枚目の安美錦(あみにしき)はいち早く自らのブログで「まだ引退はしません」と書き込んでファンを安心させた。
 

◆オン、オフの使い分け

 昭和時代、本場所中の力士はどんな心境でいるのだろうかと想像するだけで、存在が遠いという印象を抱いていた。これに対して、最近はSNSによって若手力士たちの私生活も瞬時にわかる時代になっている。どちらがいいかは別にして、今の力士たちはオンとオフの使い分けがうまくなっているように感じる。

 関取だけでなく、入門してくるほとんどの力士が携帯やスマホを持っている時代だ。SNSは誰でも自由にできる環境なので、力士たちの中にも気分転換にSNSを覗(のぞ)き見している人たちは多く、ファンもその情報を細かくチェックしている。日本相撲協会もSNSを使ってファン拡大に成功しているが、影響力が大きいだけに間違った使い方をすると、それは諸刃(もろは)の剣となって自らに振りかかってくる。特に、関取になれば、それなりの自覚を持って発信する必要があり、日本相撲協会も師匠会や力士会でも度々、注意を喚起している。

 以前はマスコミを通して伝えられたことを、本人のブログやツイッターから自分の言葉で直接、語る機会が相撲界でも多くなっている。元関脇で昨年の名古屋場所前にアキレス腱(けん)を断裂し、復活を目指す幕下17枚目の豊ノ島(とよのしま)も怪我をして手術をした経過などを、自らのブログで綴っている。

 彼らは日記代わりに日々の出来事を記録していることもあるので、取材をする側は常に彼らの記事をチェックしていないと、「特落ち」をしてしまうことにもなりかねない。昔のようにわざわざ部屋に足を運ばなくてもSNSを見るだけでわかることも多いが、一方で、それだけに直接取材による独自情報の価値も高まっている。取材の形もSNSの登場によって変わってきているといえる。

 ともあれ、ファンにとっては本場所の相撲だけではわからない力士たちの素顔をSNSによって知ることができる。それを見た上で相撲観戦すると、また違った魅力を発見できるのかもしれない。

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